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第14章 朧夜の春

唇を重ねる音。
糸引く唾液。
生温かくぬるりとした舌の感触－。
聴覚、視覚、触覚－全ての感覚が研ぎ澄まされ、自らを増々興奮させるだけだった。
だから、しない方がいいのに。
それ以上先へは進めない。
分かってる。
でも。
それでも、せずにはいられない。
彼女を、愛さずにはいられない。
もういいのだろうか。
抵抗しないでいてくれる事に甘んじ。
自分の罪を棚に上げ。
もうこのまま彼女を－。
「…せんせい」
愛欲の沼に片足を踏み入れかけた時。
自分を遠慮がちに呼ぶ声がした。