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桜の季節が巡っても
第14章 朧夜の春
「次は…いつ逢える?」
消え入りそうな声で訊かれ。
申し訳なさから、秀王はすぐに口を開けない。
「…この前戻って来たばかりで、間を置かずに割とすぐに帰って来てしまったから…二カ月。いや、三か月…もっとか」
はっきりと告げる事が憚られ、ずるいのは承知で曖昧なものにしてしまう。
「…今度は夏になってるね」
春にはもう、逢えない-淋しさは拭えない。
なんでもない風を装う泉夏の小さな呟きに、秀王はただ微笑むしかなかった。
「先生。私、夏が…八月が、誕生日なんだよ」
「そうなの?」
泉夏が咄嗟に振った話題に過ぎなかったが-彼は思った以上に大きく反応した。
「またひとつ、泉夏の事を知った」
驚きに目を見張った秀王だったが-やがてそれは嬉しそうに細められた。
「それなら次に逢えた時は、お祝いをしないと」
提案され、泉夏は無言で笑う。
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