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桜の季節が巡っても
第14章 朧夜の春
「先生の誕生日は?」
「十一月だ」
「…ほんとに?」
今度彼に逢えるまでの淋しさを思い、沈んでいた泉夏の顔が明るく輝いた。
「それじゃあ八月からの三か月間、先生との年の差が九歳に縮まる。先生に少しだけ近付ける。私…ずっと先生に釣り合うように、早くおとなになりたかったの」
自分の誕生日を祝ってもらえるなんて。
彼の誕生日を訊き出せる日が来るなんて。
例え三カ月でも、この年の差を九つに減らす事が出来るだなんて。
昨日までは想像すら不可能だった。
幸せそうな泉夏の様子は、彼もまた幸福にさせた。
一歳の年の差をこんなにも喜んでいる彼女は-やっぱり、愛しくて仕方がなかった。
そのままで十分なのに。
こんなにも自分の心を乱してるのに、子供だなんて。
そんな事、ちっとも思ってない-。
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