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桜の季節が巡っても
第14章 朧夜の春
何をしようとしているのか-秀王がその後ろ姿を追えば、やがて彼女は部屋の隅にある小さな机の前に立った。
机上に置かれた持参してきた鞄の中を、暫し探っていたようだったが-程なく目当てのものを見つけたらしかった。
薄暗がりの室内に、レジ袋が擦れるような音がする。
次いで、フィルムを破るかのようなそれが続き-恐らくそこから、彼女は何かを取り出したようだった。
その場所に佇んだままだったが、やがて彼女はこちらに踵を返した。
戻ってくる足取りは、気のせいなどでなく-遅かった。
一般的な広さのホテルの室内だ。
机からベッドまでそう距離があるわけではない。
その僅かの長さを、何かを躊躇っているようにも思えるゆっくりな歩調で進み-ようやく泉夏はベッドに到着した。
微かに軋む音を立て、元いたベッドの上にそっと腰を下ろす。
問い質すような視線を隣りに座る彼からひしひしと感じ、泉夏は迷いを振り切った。
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