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恋花火***Special Starmine
第1章 春うらら
それは軽いやつなんだけど


それだけで胸がドカドカする。


ドキドキでもドクドクでもない


最上級のドカドカ。


夜になるとまだ肌寒いから、すぐそばにあるタケルの瞳が潤んでる


「ほっぺ赤い。」


チョンって指でされる。


そして、ニコッと微笑んできた。


…美波の言う通り、本当に柔らかくなったかも。


前は何事も寄せ付けませんくらい鋭かった眼差しも


優しいお母さんみたいな……


や、お母さんの記憶ないからわかんないけど、こんな感じかなぁって。


「……あのさ、ちょっと行きたいとこあんだけど。」


そう言われて着いてくと、そこはいつぞやのクリスマスに、マフラーを買ったお店。


「…これでなんか買ってきて。」

「は!?」


いきなり五千円札を握らされた。


タケルはそっぽ向きながら、「今日あいつの誕生日だから」と、ボソッと呟いた。


「…だったら、尚更タケルが選んだ方がいいよ。ほら、中に行こ。」

「えー、やだ。」

「いいから早く。」


不満を言いながらも、大人しく店内に入った。


……今日は、タケルのお母さんのお誕生日。


タケルのお母さんは、例の恋人とは別れた。


私のおじいちゃんが事故に遭ってから、やっぱり私だけじゃ困る事も多々あって、そんな時タケルのお母さんがいっぱい助けてくれた。


そして徐々にタケルと話す機会も増えて、つい先日、恋人が出て行った事を教えてくれたのだ。


それを機にタケルはまた、自分の家でお母さんと二人で暮らしている。


「…なに買いたいか大体決めてるの?」

「コップとか皿とかそっち系。…あいつに結構壊されたし。」


タケルのお母さんの元恋人は、酒に酔っては家の物を壊したと聞いた。


タケルの物だって、たくさん捨てられたし。


思い出しても悲しくなる……。


「これなんかどう?」

「え、大きすぎない?それご飯茶碗ていうか丼じゃん。」

「…じゃあこれは?」

「そんなキャラクターついててお母さん喜ぶかなぁ」

「永遠に決まんねー」


やっと素敵なプレゼントが決まったのは、閉店間近の20時になるところだった。



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