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優しい愛には棘がある
第1章 ご注文はイケナイ遊戯
* * * * * * *
夢のような一夜が明けて、二日が経った。
月曜日、皐月は気だるい心身を引きずって、二日振りのオフィスに出勤していた。
「岸辺さん」
業務をこなしていた最中、にわかに皐月は女の鋭い声音に耳を打たれた。
声の主は田中潤子(たなかじゅんこ)、古手の社員だ。
潤子は横柄に腕を組み、営業部の若い社員をなじっていた。
「ごめんなさい、田中さん……。私、部署に戻らなくちゃ……」
「お待ちなさい。貴女、営業部よね。営業部の人間は、クライアントを取ってくるのが仕事でしょう。それが岸辺さん、貴女の実積は、四月からずぅっとビリ。やり方がおかしいんだわ」
「いいえ、私はちゃんとやっています。我が社のサービス内容も、他社と比較したメリットも、分かりやすく説明しているつもりです」
「まさか、馬鹿正直に説明しているだけ?それでお客様が獲得出来るなら、小学生にだって務まるわ。貴女甘いわ。今月もビリなら、お茶汲みでもやっていた方が会社に来る意味まだあるわよ」
「ごめ……なさ……」
「田中」
デスクを離れ、皐月は潤子と若手社員──…岸辺りこ(きしべりこ)の間に割って入った。