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優しい愛には棘がある
第1章 ご注文はイケナイ遊戯
「山内さん、貴女には関係のない話をしているんです。それより金髪を直していないの?良い年して恥ずかしくないんですか」
「あたし、お前の三回りは若いんで」
「何ですって?!」
「岸辺さん」
潤子の金切り声に片耳を塞ぎ、皐月はりこを瞥見した。
「戻って良いぜ。ごめんな、うちの係長が世話焼きで」
「はっ、はい、有り難うございます」
りこが従順に頭を下げた。黒い潤沢を湛えた双眸、そこにはオフィスに相応しからぬ情感があった。
それからりこは数秒遅れて歩き出したが、その調子はさばかり速度の鈍い小股だ。
「岸辺さん?」
「あの、皐月先輩……」
皐月の右手のすぐ側に、りこの左手が戻っていた。
「 ──……」
「…………」
「悪りぃ、当分、なし。事情は昼休み聞いてくれ」
「…──っ」
りこの瞳がいよいよ潤っていった。
そしてりこは、潤子になじられていた時より蒼白な顔を背けて、今度こそ退室していった。