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優しい愛には棘がある
第1章 ご注文はイケナイ遊戯
「山内さん」
デスクに足先を向けた皐月を、陰険な声が引きとめた。
「何、田中」
「貴女はそういう態度も改めるべきだわ。一応、上の評価があるから簡単に辞めてもらうことが出来ないけれど、貴女は社会を何だと思っているの」
「社会ってのはな、田中。お前みてぇなモラハラの人間の山から、数少ない水晶玉を掘り出せるかが賭かってるとこだ。水晶玉が会社で見付かるかは分かんねぇ。だから会社は適当にやってれば良い」
「貴女はっ……今は良くても、将来、皺寄せが来るわ。あの岸辺さんを庇ったって、貴女に何のメリットがあるの。都合の良い時に助けてくれる、そんな人間と認識されて、利用されるだけのこと。不良みたいな格好をして、人の良い顔はやめなさい」
「──……」
一体、どこまで現実を否定すれば気が済むのだ。
それだけしかつめらしくしながら、潤子の語る社会とは、彼女自身がこの狭い組織の中で確立してきた固定概念に過ぎないではないか。
人間に本来備わる純粋なものをおとしめてまで、目先の利欲に従う。
それこそどんなメリットがある?
「田中ってさぁ」
「…………」
「つくづく会社に踊らされてるな。あたしは会社に都合の良い人間になるくらいなら、岸辺さんみたく若くて可愛い子に利用されてる方が上等」