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優しい愛には棘がある
第1章 ご注文はイケナイ遊戯
「妬けよ」
「妬かなくちゃ、家に嫌がらせの貼り紙しますか?」
「お前が好きって、壁やドアに油性で書く」
「──……」
本当にずるい。
器量のほどは関係ない。意思も関係ない。ただ感じて喘いでいれば良いのだと、皐月は心咲をさんざっぱらマリオネット呼ばわりしておきながら、たった二日会わなかっただけで、まるで別人に変わり果てている。
心咲は皐月に会いたかった。二日間、ずっと。
会いに来るのが遅すぎる。
「あたし、上司と喧嘩してんだ。いつクビになるか分かんねぇ。………気持ち悪りぃ。あんなやつらにはいそうですかって、屈服するくれぇなら、とっととやめる。どこ行っても同じだろうけど」
「それがストレスの原因ですか?」
「そうだな。ストレスの一部だ」
「──……」
「お前に会ってから、イライラしてばっかじゃなくなった。お前んこと思い出すと、あいつらんことや世の中のこと、考えてる暇なくなっちまう」
「…………」
「あたし、初めてこの世を愛したぜ。お前みてぇなやつがいること、幻想じゃねえって確信したから」
「…──っ、……」
今一度、心咲は顔を上げて皐月を見つめる。
口を閉じていれば完璧な美女だ。
頼もしくて格好良い。そこには少し、ほんの少し、放っておけない危なっかしさがちらつく。
皐月の顔つきは真剣だ。心咲を、真剣に見つめてくれている。