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優しい愛には棘がある
第2章 Moon crater affection
佐和がディルドを持ち出した。彼女の手首ほどの太さのそれは、指に触れるのも躊躇うような形状のでこぼこが巡らせてあり、もう一方の手には低温蝋燭。
薄闇の中、朱色がいづるの裸体を暴いた。
佐和のつけたライターが、乳房の真上で赤い筒に火をともした。
叫び出したくなる。胸が苦しい。痛い。
これが初めてではない。佐和がいづるを躾けるのは初めてではないのに、今、きっと一生分の恐怖がいづるを雁字搦めにしている。
特定の他人に関心を惹かれなかったのは、恋だの愛だのが理解出来なかったからではない。
こうした嚮後を怖れて、いづるは一人でいる理由を自分自身にこじつけていた。
淡い片想いも許されない。いづるはさしずめ感情のないドール──…二人の育て親という、自分の持ち主の意に背くような欲望を持ってはいけなかったのだ。
それでも、忘れられない。
あの朝、月子だから救いたいと願ったのと同じだ。月子だから忘れられない。