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一族の恥
第1章 お母さんへ
 ぼくは自分で、自分の選択で、やっと死ねるんや。


 あんたの息子として生まれて、あんたに殺された自分を、今度は自分自身が望むかたちで、終わらせることが出来るんや。


 ぼくはもうこれで、あんたの息子として生きて行かんでええんや。


 恨まれたところで、人の役に立った上に、カタキまでとれるんや。


 魂だけ失ってしまったぼくの屍のような肉体でも、社会の役に立ったんや。

 今までは一族ゆう狭い世界の中での存在やったけどなぼくは。


 これからは、日本社会の恥として大々的に認めてもらえて、そのうえ、同じ人間ゆう生き物を「法」の正義のもとに同じ人間が殺してしまうこと、それがまっことの正義やと思ってる、この世で一番まともな人間に殺してもらえるんや。



 こんな嬉しいこと、ほかにあるか?


 ぼくは、もう、なんも怖くない。

 
 お父さんみたいに、暴れる前のお父さんみたいに、たくさん酒を飲んだんや。


 もう、怖いものなんかいっこもないわ。



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