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一族の恥
第1章 お母さんへ
 な、ババア、分かるか?



 おまえが康生を。
 5歳やった康生を、高校出てすぐ一緒になった俺と里奈子んとこに押し付けてから、ずっとな。



 康生は俺が見てないとき、決まって里奈子に擦り寄って、「おかあさんおかあさん」言うて必死で甘えとったんや。



 だって康生は、おまえに愛されたことなんかいっぺんもないんやからな。



 赤ん坊のころ、俺が夜中起きて康生にミルクやってたん、覚えてるか?
 覚えてないやろうな。



 おまえが仕事やなんや言うて理由つけて保育園のお迎え行きたがらへんから、俺が部活の練習休まんでええように、里奈子が康生の保育園のお迎え行ってくれることもあったんやぞ?
 高校の制服着て、ちっこい康生抱っこして、学生鞄をぶら下げて帰んねん。
 里奈子のやつ、どんな目でほかのお母さんがたに見られとったんやろうなぁ。


 熱出したら里奈子が看病して、歯が抜けかけたら里奈子がペンチで抜いたって、ゲリしたら里奈子が毎回シャワーで洗ったって。



 そら、康生も「おかあさん」て里奈子を呼ぶやろう。
 実際、里奈子が康生の母親役を務めとったんや。
 むしろ康生の感覚が正しいわな。

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