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星の島で恋をした【完結】
第6章 《六》
 あらがおうと男の腕の中でもがいたが、外れるどころかますます強く抱きしめられた。

「行くな」
「でも! カティヤ王女が!」
「カティヤには俺から連絡する」
「どうやって!」
「いいから任せておけ」

 そう言って男はセルマを金色の瞳でじっと見つめてきた。空にある星のような瞳にセルマは魅入られた。こんな状況だというのに思わずじっと見つめてしまう。

「きれいな緑色をしている」

 低い囁き声は妙に熱っぽくてセルマの身体は震えた。しかも男はセルマの頬を人差し指の背で優しく撫でてきた。ぞくりとした感覚に、背が震えた。

 その様子をうかがうように、男は金色の瞳でじっとセルマを見つめてきた。目を離せずに同じように見つめ返す。金色の瞳に吸い込まれるかのような錯覚。

 あまりにもきれいで、見つめていられなくて瞳を閉じると、唇に熱くて柔らかな感触。

 それはしばらく重なっていたが、セルマが吐息を吐いた途端に離れていった。

「え……」

 今のはなんだったのか慌てて目を開けると、甘ったるい蜂蜜のような光を宿した男の瞳があった。

「見知らぬ男にそうやって簡単に自分を許すな」

 男はそう言うとセルマから視線を逸らし、左肩の傷跡に指で触れた。

「とりあえずの術を施すが、これで呪いが解けたわけではないからな」

 男に触れられた傷跡がずくんと疼いた。

「……んぁっ」

 先ほどまで痛くなかったのに、急に痛覚が復活したかのように痛い。思わず呻き声が洩れた。

「今から傷を塞ぐ。少し痛むが我慢してくれ」

 そう言って男は呪文を口にした。

「【エラ ガサフ オ ユジク】」

 セルマは魔術は使えないが、知識はある。

 今、男が唱えたのは傷口を塞ぐ術だ。呪文とともに男の指先から温かな光があふれ、セルマの傷口を塞ごうとしたのだが。

 ちっという舌打ちの後、悔しそうな声がした。

「……やはり駄目か」

 そればかりか、セルマの肩口がぞわりとして総毛立った。

「ぁっ……!」
「くそっ!」
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