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星の島で恋をした【完結】
第16章 《十六》
リクハルドはしばらくセルマのことをきつく抱きしめていたが、ようやく気持ちが落ち着いたのか少し腕の力を緩め、小さな声で詠唱を始めた。
「【エラ ガサフ オ ユジク】」
それは何度か聞いたことのある治癒の詠唱。唱え終わると同時にセルマの傷口はふさがった。その鮮やかさにセルマからは感心の吐息が洩れた。
「……傷物にしてしまったな」
「これくらいの怪我ならよくしてるから、今更、かな」
セルマの答えにリクハルドはため息を吐いた。
「仕事柄仕方がないとはいえ、もう少し自分を大切にしろ」
「……はい」
それはリクハルドだけではなく、カティヤ王女にもよく言われる言葉だった。
だけど自分の身を大切に思うあまり、護らなければならない人を護れなかったとなったら本末転倒だ。
今回の件だって、セルマが身を呈したからこそカティヤ王女を護ることができたのだ。
だからきっと今後もセルマは自分を犠牲にしてカティヤ王女を護るだろう。
「とりあえず、セルマのおかげでどうにかスキアを倒せた」
「ううん。私がいなくても大丈夫だったんじゃないの?」
セルマがしたのは、スキアに剣を突き立てたことだけだ。あとはリクハルドの足を引っ張っていたとしか思えなかった。
普段だったらもっと適切に対応できていたのにとため息を吐くと、リクハルドは大きく頭を振った。
「そんなことない。セルマがいなかったらスキアに傷を付けられなかった」
「え……。だって雷がスキアを貫いていたよね?」
「ああ、あれは貫いただけでスキアには傷を付けてない」
「…………?」
雷はスキアを貫いて地面に突き刺さっていたような気がしたのだけど、違ったのだろうか。
「スキアは影だ。だから縫い止めることはできる。だけど傷をつけることはできなかったんだ」
「……よく分からないけど」
「セルマがいなければ無理だったってこと。ありがとう」
「うん。役に立ったのならよかった」
「【エラ ガサフ オ ユジク】」
それは何度か聞いたことのある治癒の詠唱。唱え終わると同時にセルマの傷口はふさがった。その鮮やかさにセルマからは感心の吐息が洩れた。
「……傷物にしてしまったな」
「これくらいの怪我ならよくしてるから、今更、かな」
セルマの答えにリクハルドはため息を吐いた。
「仕事柄仕方がないとはいえ、もう少し自分を大切にしろ」
「……はい」
それはリクハルドだけではなく、カティヤ王女にもよく言われる言葉だった。
だけど自分の身を大切に思うあまり、護らなければならない人を護れなかったとなったら本末転倒だ。
今回の件だって、セルマが身を呈したからこそカティヤ王女を護ることができたのだ。
だからきっと今後もセルマは自分を犠牲にしてカティヤ王女を護るだろう。
「とりあえず、セルマのおかげでどうにかスキアを倒せた」
「ううん。私がいなくても大丈夫だったんじゃないの?」
セルマがしたのは、スキアに剣を突き立てたことだけだ。あとはリクハルドの足を引っ張っていたとしか思えなかった。
普段だったらもっと適切に対応できていたのにとため息を吐くと、リクハルドは大きく頭を振った。
「そんなことない。セルマがいなかったらスキアに傷を付けられなかった」
「え……。だって雷がスキアを貫いていたよね?」
「ああ、あれは貫いただけでスキアには傷を付けてない」
「…………?」
雷はスキアを貫いて地面に突き刺さっていたような気がしたのだけど、違ったのだろうか。
「スキアは影だ。だから縫い止めることはできる。だけど傷をつけることはできなかったんだ」
「……よく分からないけど」
「セルマがいなければ無理だったってこと。ありがとう」
「うん。役に立ったのならよかった」