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全てが終わったとき、俺は変わらず君に恋をしているだろうか
第1章 藍は香る
「わた、私――……」
「わ、バカ、どこに行くつもりだ!」
シラハが我に帰ったのは、ラズリアが踵を返し洞穴から出て行こうとしたときであった。一見逃げ出したようにも見えるラズリアを前に焦ったシラハは、大声を張り上げながら彼女の身体を強く引く。
「こんな視界の悪い中歩き回るやつがどこにいる!? たかが雨だと油断していると死ぬぞ!」
動物や魔物と異なり、人間は悪天候への対応力がかなり低い。この状況下で魔物に遭遇しては生存率が下がってしまう。必要のない危険を侵さぬのが冒険者の常識。このまま森を進むのは好ましくない。
「わ……わ、わかりました、から……! 離してください……!」
「あ……」
何をそう必死になっていたのだろうか。ラズリアを洞穴から出すまいと、シラハは知らずのうちに彼女の冷えきった体を抱きすくめていた。
「す、すまん……」
ぱっと手を離したが、二人の間にはなんとも言いがたい妙な空気が流れている。
「……そ、その服も濡れてるだろう? 後ろを向いているから、お前も服を脱いで乾かせ。そうしたらこの毛布にくるまって、火に当たるんだ」
「は、はい……」
そう返事はしたものの、ラズリアは衣服を脱ぐのをためらっているようであった。湿った服を脱ぐ生々しい音が、背を向けたシラハの耳を犯している。
彼女の艶かしい肉体が生まれたままの姿になっているのだと想像しつつ、先ほど抱きすくめたラズリアの柔らかい感触を思い出したシラハの欲情は、いたずらに膨れ上がっていく――。
「あの……シラハさんは、どうされるんですか……? 毛布、これ一枚しかないみたい、ですけど……」