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全てが終わったとき、俺は変わらず君に恋をしているだろうか
第1章 藍は香る
毛布にくるまったラズリアに声をかけられ、シラハは心臓を高鳴らせた。出逢った当初は気にもならなかった彼女の透き通った声に掻き乱されている。
「俺はいい。忍者がちょっとやそっとで病にかかったりするものか」
「そんなの……だめ、です。私の事情でここまできて頂いたのに、迷惑をかけたりできません」
ラズリアは毛布をほんの少し広げる。その隙間から、彼女の白い肌がちらついていた。
「あの、一緒、に……」
――誘っているのか?
この状況下で一緒に毛布にくるまれなどと、そう取られても文句は言えない。そのことをこの少女はわかっているのか。いや、今までの言動から察するに、そんなことをする人間とは到底思えないが……。
怒りと煩悩で頭が沸騰しそうだ。何か喋るとどうにかなってしまいそうだと、シラハは下衣を脱ぎ縄にかけてから無言のままラズリアがくるまる毛布へと入った。
互いに言葉はなく、焚き火が弾け、干している衣服から滴る水と、そして外で降りすさぶ雨の音だけが洞穴を支配している。
触れあう肌が熱を帯びていく。
(……香り、が……)
間近で見るラズリアから蠱惑的な甘い香りが漂っている。頭がぐらつき、思考がどんどん鈍っていくのがわかった。
ちらとラズリアを窺い見る。彼女の憂う瞳は情事のそれに似ている気がした。
胸の鼓動が速くなっていく。呼吸が荒くなり、下半身に血が急激に流れ込み、熱がどんどん溜まっていく。
(なんだ、これは……。何故、身体がこんなにもうずく……!)
知り合って間もない少女を歯牙にかけるなど、あってはならない。少なくとも自分はそんな鬼畜じみた人間ではないと自負している。
だがそんな理性にも霞がかかり、本能だけが研ぎ澄まされていった。何がきっかけで過ちをおかすかわかったものではない。
出来ればこのまま、何事もなく雨が止むのを待ちたい。
しかしシラハのそんな願いも空しく――。
「シラハ、さん……? あの、お加減が優れないようですが……」
ラズリアの瑞々しい唇がなまめかしく動いた瞬間、なけなしの理性など跡形もなく吹き飛んだ。
「んっ、ん……!?」
シラハが気づいたときには、ラズリアを毛布ごと洞穴の地面に押し倒し、その赤い唇に吸い付いていた。