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全てが終わったとき、俺は変わらず君に恋をしているだろうか
第1章 藍は香る
恐れるべきは、リリスに取りつかれた女と交わった男たちの末路である。
天にも昇る絶頂を味わったその最後には、精液はおろかその生命力の全てを吸い尽くされ絶命に至る。
その死体はまさに干からびたミイラのごとし。
ラズリアの母も、リリスに操られるままに同族の男たちを屍に変えた。ラズリア自身も、それまで優しかった母が狂ったように乱れ行為に及んでいるのを目の当たりにしている。
その日のうちにラズリアの母は、夫や息子を殺され怒りに怒った女たちに殺された。
これで全てが終わったかのように見えたのも束の間、リリスは取りついた身体が使い物にならなくなると、今度はその娘であるラズリアの身体に潜り込んだのだ。
また同族たちを殺されてはかなわぬと、民たちはこぞってラズリアの死を望んだ。ただ一人、彼女の師である叔母を除いて。
叔母は年端もいかぬラズリアを亡き者にするのは忍びない、また封印も討伐する手立てもなしに殺してもリリスはまた別の女に取りつくだけだと言って、必死にラズリアの命を乞うた。
そうした経緯を経て、ラズリアは苦肉の策として牢獄に入れられた。他人と決して接触せぬための、余りに些末な処置であった。
外界との交わりを断った秘境の中で、ラズリアは更に孤立したのである。
しかしラズリアが成長するにつれ、内に宿るリリスの魔力は増し、芳醇な香りとなって男を強烈に惹き付けるようになった。連日、ラズリアが投獄された牢屋に老若の男が獣のような血走る目を剥きだしにして群り、鉄格子の隙間からその珠のような肌を掴もうと手を伸ばしてくる。
ラズリアとて全てに納得していたわけではない。
悪霊に取り付かれていたとはいえ、母親はなぶり殺しにされ自分は監禁。いつか男達が禁固を破って己を陵辱するのではないかという恐怖が毎日続いた。集落の女達はそんな自分を厄介者とみなして、関わらないものならばまだよし、中にはいわれのない罵倒を浴びせてくる者すらいたのである。
師である叔母は、そんなラズリアを不憫に思った。元々知的好奇心が旺盛だったラズリアの、貴重な若き時間を牢獄で縛りつけなければならぬこの状況を、亡き姉に懺悔し続けた。