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全てが終わったとき、俺は変わらず君に恋をしているだろうか
第1章 藍は香る
そしてラズリアが16歳になったとき、師は長年研究し続けてきたリリスの討伐方法をラズリアに伝授したのである。
自身にその気があるのなら、この秘境を出て己の手で身に宿る悪霊に引導を渡してみるか、と。
しかしそれは同時に、男の精気を無差別に搾取する魔物を野に放つのと同義であった。
己の言動一つで、人を殺めることになるかもしれない。
その危険を理解した上で、己のこの閉ざされた運命を切り開いてみるか、と、師はラズリアに問うた。
ラズリアは力強く頷いた。このままリーウィの牢に繋がれていたとしても
、いつかはこの身を貫かれてしまうかもしれない。何もせぬまま、身に宿るリリスと一蓮托生などごめんだ。
少しでも、元の清廉潔白な身体に戻れる可能性があるのなら、それに賭けたい。
こうしてラズリアは希望と不安を胸に故郷を発った。
師からリリス討伐の手段と、リリスの魔力を抑えこむケープマントを託されて。
ラズリアがセントパーロウで求めた花は、そのリリス討伐のために必要なものの一つだったのである。
森で、枯れかかっている花を見つけたときは焦った。この機を逃したら、あと最低五年はリリスを身に宿していなくてはならなくなる。そう考えただけでぞっとした。
自分は崖を登って花を摘む技術がない。急いでセントパーロウに引き返して協力者を探し回った。酒場をいくつも訪ね、女の冒険者で登攀(クライミング)スキルを持つ者の助力を求めた。
男との接触は極力避けるべきだ。ケープマントに身を包んでいる限りリリスの魔力が外に漏れることはないが、むざむざ死の可能性を近づかせることもあるまい。
だが冒険者は見つからなかった。クエスト依頼料も払えず、姿も明るみに出せず事情もひた隠しにしたとあっては皆が皆訝しがってラズリアの依頼を断った。
そんなラズリアが最後に訪れたのが青猫亭であった。