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全てが終わったとき、俺は変わらず君に恋をしているだろうか
第2章 清廉 -セイレーン-

 夕方も過ぎれば酒場への来客がどっと増える。青猫亭もその例に漏れず、席のほとんどが埋まっていた。

 クエストを終えて帰ってきた冒険者グループや、セントパーロウの住人たちが盛り上がっている中、シラハはカウンター席の一番端でヤミーラ秘蔵の酒を煽っていたが。

「どう? その蜂蜜酒。手に入れるの苦労したのよ」

 得意気になってカウンターの中からそう話しかけたヤミーラだったが、シラハはどこか上の空である。

「ちょっと、シラハ?」

「…………まずい」

「あぁんですって!?」

 ヤミーラが激昂に駆られて思いきりカウンターを叩いたとき、シラハはようやく顔を持ち上げた。

「アタシの酒がまずいたー、一体どういう了見よ! !」

 酒好きを自負するヤミーラとしては、シラハの放ったまずいという言葉を聞き流すことはできない。

「あ……いや。酒はウマイよ。ただ、なんか……気分の問題か……?」

 どうにもシラハは森から戻ってきてからというもの、いつもの調子を取り戻せずにいた。

 秘蔵の酒も舌に馴染んでいるはずの酒場の料理も美味には違いないが、何かこう物足りない。胸にぽっかりと穴が開いたかのような虚無感に苛まれている。

「……あのラズリアって娘が頭にちらついて、落ち着かん」

 こうしている間にも、藍髪の少女の姿が幾度となく脳裏に過る。

「シラハ……あんたそれ……、リリスの魔力に侵されちゃってんじゃないの?」

「はぁ?」

「だって、あんた森で例の子と……ヤッちゃったんでしょ?」

 もう少し言葉を選べないのかとも思ったが、シラハは口を結んだ。
 
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