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全てが終わったとき、俺は変わらず君に恋をしているだろうか
第2章 清廉 -セイレーン-
ラズリアが森から去ったあと、シラハはどうやって青猫亭に戻ってきたか記憶が曖昧になっていた。途中で魔狼アマラカマラの牙を回収するのも忘れ、気づいたときにはこのカウンター席に着いていたのである。
どうやら知らぬうちに森での出来事をヤミーラに全て話していたらしく、彼女は終始呆れたような素振りを見せつつも、シラハを心配して仕事の合間合間にこうして声をかけていた。
「あんたよく無事だったわよ。よかったわねミイラにならなくて。でも、あんたの身体ん中にリリスの魔力が残ってんじゃいつどうなってもおかしくないと思うのよね。例えば、その魔力の影響でまたあの子を食い物にしたいとか考えてるんじゃないの? リリスからしでみればあんたなんてただの餌だもの。それでまたあの子とずっこんばっこんしてもらえれば餌にありつけるって寸法なわけで」
「……というかヤミーラ、お前あいつの事情を知っておいて俺を焚き付けるなんていい度胸してるな」
「う……だって、あの子あんたを追いかけるなんて思ってなかったんだもの。気づいたら森に走っていっちゃって止める暇なんてなかったわよ。それに、やっぱり同情しちゃうわー。まだ16歳よ、16歳! 恋もおしゃれも死ぬほどしたいってお年頃よ! それを悪霊なんかに取りつかれてたった一人で立ち向かわなきゃならないのよ!? 少しは可哀想だと思わないのシラハ」
話が刷り変わってきていることには気づいていないのか、ヤミーラは興奮ぎみに叫んでいた。
「……俺を侵しているこの魔力はいつ消えるんだ」
正直なところ、ラズリアの身の上よりもシラハは自分の行く末の方が気になっている。このままの状態では簡単なクエスト一つこなせる気がしない。
「そりゃー……リリスが死ねば魔力も消えるんじゃないのかしら」
それはつまり、ラズリアがリリスを討伐するまでは常時この状態を強いられるということだ。
ふとした瞬間、美しい少女が脳を埋め尽くす。
ヤミーラの言った通り、ラズリアを抱いたときの極楽にも昇る心地をもう一度味わいたいとさえ。