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全てが終わったとき、俺は変わらず君に恋をしているだろうか
第2章 清廉 -セイレーン-

 ラズリアの姿は見えない。だがここに逃げ込んだのは間違いないのだ。

 シラハは苛立ち半分に辺りの木箱たちを拳で破壊していく。

「ひっ……」

 数個目の木箱が木屑と化したとき、その後ろからケープマントで必死に頭を押さえるラズリアが出てきた。

「……何で逃げる」

「ご、ごめんなさい、ごめんなさい……! 私、ヤミーラさんにお礼を言いたくて訪ねただけなんです……。シラハさんがいらっしゃるなんて、思わなくて……」

 答えになっていないと、シラハは眉間を押さえた。

「……俺が怖いのか?」

「わ、私が怖いのは、何かの拍子に貴方を殺してしまうのではないかということです……」

 フードの端から覗くラズリアの唇は小刻みに震えている。それを眺めているうちに、シラハの記憶が鮮明に甦ってきた。

 ケープマントに隠された禁断の果実の素顔、至高の女体。それを貫いた瞬間の得も言われぬ多幸感。男としてこの世に生まれ落ち、天女にも勝る女に出逢えたことを神に感謝したことを。

 しかし本来なら一度交わり精を吐き出したらば確実に殺される悪霊つき。
 自分が生きているのは運が良かっただけかも知れない。次にラズリアと交わったとき、また平穏無事に済む保証などどこにもない。

 頭ではそうわかってはいるものの、ふつふつと沸き立つ劣情を抑えることは容易ではない。

 煮え立った血流がシラハの全身を駆けめぐり、下半身に集中していく。

「──だめだ」

  シラハはラズリアの白いケープマント瞬く間に剥ぎ取ると、彼女を冷たい路地裏に押し倒した。

「え、え、シラハさ、ん……? な、なにを……」

「お前を犯す」

 ラズリアの困惑は恐怖となり、シラハをはね除けようと必死にもがいている。しかし相手は男、それも己の肉体を駆使して日々魔物と対峙する忍者だ。小柄なラズリアにどうとできるものではない。

「だ、だめですっ、だって、シラハさん今度こそ死んでしまうかもしれないのに……!」

「うるさい、もう、我慢できない……」

「ひぁっ……んっ……」

 首筋に吸い付かれた瞬間、ラズリアの抵抗力が息を潜めていった。
 
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