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全てが終わったとき、俺は変わらず君に恋をしているだろうか
第1章 藍は香る
セントパーロウの西北にある森は魔物の巣窟となっているものの、簡易な道がしかれていることもあり一般人の出入りもそれなりにあった。
それは定期的に冒険者たちが魔物を狩っているためであり、今回の目的であるユーフェンの花のように薬剤の元となる植物の宝庫だからである。
故に材料を欲する調剤師を守りつつ魔物を撃退し森を進む、というクエストは定期的に発生しており、シラハ自身も何度依頼されたか知れない。
この森はシラハの庭といっても過言ではなかった。
故に、シラハが森でどんな魔物と遭遇しようとも大した問題ではない。
「グルルルルルゥ……」
自分の体格よりも五倍はあろうという、低い唸り声を上げる魔狼アマラカマラを前に笑みを浮かべる余裕すらあった。
その乳白色の牙は研磨剤になるし、青みがかった体毛は剥いでご婦人たちのコートや手袋にもなろう。
巨体の魔狼を値踏みしながら刀を構え、シラハは一歩踏み出した。
瞬間、アマラカマラはシラハの姿を見失い、戸惑いの色を瞳に映す。
「ギャウッ」
前足に痛覚が走り、悲鳴にも似た鳴き声を上げてアマラカマラは地団駄を踏み身を捩る。暴れまわる巨体は周りの木々をなぎ倒していった。
しかし尚もアマラカマラの四肢はかまいたちに見回れたかのように切り刻まれていく。
これがシラハの基本的な戦いかたであった。
常人の目には止まらぬ速さで獲物を撹乱し、反撃する隙も与えず終始己のペースで戦いを有利に進めていく。
相手が再びシラハの姿を目にしたとき。それは狩られる間際。