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全てが終わったとき、俺は変わらず君に恋をしているだろうか
第1章 藍は香る
それで思わず助太刀した、ということらしい。彼女からしたらそれは善意からくる行動だったのだろうが、シラハにしてみればありがた迷惑以外の何物でもない。
おかげでアマラカマラの毛皮はほとんど損傷してしまい、売り物になりそうなのは牙だけである。
「俺がどんな冒険者なのか、ヤミーラに聞かなかったか?」
「……セントパーロウでも一、二を争う冒険者だから、心配しなくてよいと……」
ならば半端な手出しは避けてもらいたかったものだ。シラハは心の内で文句を垂れる。
シラハのそんな態度に、自分が招かれざる者だったと知った女の肩が小さくなっていく。
(……八つ当たりだな、これじゃ)
ここのところ本当に休む暇がなかった。今朝終えたクエスト以降は本来なら予定がなく、一日中のんびりしていようとしていたところに、花摘みのクエスト依頼が舞い込んだのだ。不満がでない方がどうかしている。
とはいえ、女にしてみれば花が手に入らなければよほど困るのだろうし、シラハの事情など知るはずもない。シラハは自分が大人げなかったと頭をかいた。
「ま、いいや。せっかく来たんだから道案内を頼む。断崖っていっても何ヵ所もあるしな」
「は、はい。こちらです……」
女はシラハの脇を通り抜け、森の奥へと歩を進める。