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全てが終わったとき、俺は変わらず君に恋をしているだろうか
第1章 藍は香る
「あ、の……出来れば、あまり私に近づかないで頂きたいのですが……」
シラハとしてはさほど近づいたつもりもない。距離にして1mは離れている。
ふとヤミーラとの酒場でのやり取りを思い出した。
この女は当初、登攀スキルを持つ"女冒険者"を捜していたではないか。
「……男が嫌いなのか? それともそっちの気があるのか。ああ、そんな声して実は男か」
「あの、いえ……そういうわけではないんです……。あ……」
何を思ったのか、女は急にシラハの方を振り返った。
「あ、ありがとうございます……。その、花摘みを引き受けてくださって……。私、本当に途方にくれていて……」
――妙な女だ。
自分の姿をひた隠しにし他人との接触を避けるような言動を取りながら、結局はこうして合流して深々と頭を下げて礼を述べる。
困惑するなという方が無理がある。
元々シラハも誰かと組んでクエストに挑むことは少ない。特別人が苦手というわわけではないが、ここまでとっつきにくい人物と数時間共にいるのは息がつまる。
「気にしなくていい。さ、行くぞ。花が枯れてしまっては元も子もない」