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花咲く夜に
第5章 交錯
『……ここからは、
谷津川でも数人しか知らないんだ。

俺と、竹中ってジイサンと……
当の貴斗と祖母さんだけ。

貴斗な、
美世さんから性的行為を受けていたらしいんだ』


めぐるは不穏な予感から頭がグラグラしていたが、
脳内がショックで真っ白になる。


『……美世さんが何故そういう事をしたのかまでは分からない。
だけど、
貴斗の父親とは環境を変えたら関係は余計悪化したらしくて。
貴斗は高校に上がる前に昭恵さんが引き取ったんだ。
美世さんは……
ノイローゼ状態だったそうだけれどな。

昭恵さんはそれを知って、激怒して美世さんを勘当したそうだ。

………美世さんは、
………
精神が錯乱してたんだろうな。歩道橋から車道へ飛び降りたそうだ。

一命は取り止めたものの、確か脊髄を損傷して…
どこかの病院か施設で殆ど寝たきりになってると聞いたよ。
貴斗は、飄々としてるけど。
傷は俺には計り知れないんだ。昔から知ってるけどね。
あいつは、だからあの年齢でああやって倹しい暮らしをしてるのかなって思う。独身なら、仕事や住居くらい自分でどうとでもできるだろ?
何も田舎の村で祖母さんと生活しなくてもさ。
………ごめん、
喋り過ぎたな』


ハッとして優さんは口をつぐむ。

『めぐるちゃん、
大丈夫か?
ごめん、深く話し過ぎたかもしれない』


『……いえ………』
めぐるは声を出す。
力を込め、意識的に。
『……大丈夫です。
ありがとうございます、
教えて下さって……』


『あーもう、
看護師に捕まっちゃったよー』
開き戸がスーッと開いて、貴斗が勢いよく入ってくる。


『どっかのジイサンが転倒しそうになって、
咄嗟に支えたらそのまま運んでくれって………
どうしたの?』

めぐると優の陰鬱な表情を見て、
貴斗は怪訝な顔をした。

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