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花咲く夜に
第5章 交錯
『……優、
まさかお前……
めぐるに手ぇ出したんじゃねぇだろうな』

早合点した貴斗が優を睨んだ。


『違う違う!!
何でそうなるんだよ!
隣の患者がジジイで、
俺が夜眠れないっつー愚痴を溢したんだよ。

ごめんね、めぐるちゃん!ねっ』

優は無理やり笑顔を作り、焦ってめぐるにそう話す。

めぐるも慌てて『だ、
大丈夫ですよ!』
と取り直した。


『本当か?
優は面食いだからなぁ………入院中は美園さんもずっとは居ないし』

ブツブツと文句を言いながらもそれ以上は突っ込まずに、
貴斗は優と雑談している。

めぐるはボンヤリと2人のやり取りを聞いていた。


――――――――――
『どっか寄ってく?』

貴斗は帰り道、
ワゴンRを運転しながら助手席のめぐるに訊ねた。

『寄ってくったってあんま店もないけどね(笑)』


めぐるは優から聞いた貴斗の<事情>に、
頭がぼーっとしたままである。


『めぐる、
聞いてんのか?』
信号待ちで貴斗は停車したままめぐるの顔を覗き込む。

『うっぎゃああ!』
いきなり目の前に貴斗の顔が現れ、
驚愕しためぐるは叫ぶ。

『………あのさぁ………
傷つくんですけど』

ポン、
と貴斗の左手がめぐるの膝に投げられた。

『……な、何?』

『手。右手を貸しなよ』

右手を貴斗の左手に重ねる。

(温かい………)


めぐるは貴斗の横顔を見る。

(優さんの話は本当……?あなたはどんな気持ちで、どんな風に生きてきたの)
言葉には出せない質問を、投げ掛けた。
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