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花咲く夜に
第5章 交錯
警戒でも怯えでもなく、
めぐるの心のモヤモヤが瞳と態度に表れただけなのに。


不器用な2人は、
誤解したままで日々を過ごしていく――――……。



――――――――――
その週末。
金曜日の夕方。

貴斗は不定期で週4日郵便局へと勤めに出ていた。


めぐるは予定表通りに、
分からないことはメッセージで訊いて……
昭恵にも手伝ってもらいながらこなしていた。


休憩していると、スマホに着信が入った。

〔美藤拓海〕
ブーブーとバイブしている。

めぐるは昭恵に一言断ってから、
少し離れてTELに出た。


今日は貴斗は郵便局へ出ていて不在だ。

『もしもし?拓海?』

『めぐる、
元気かー?』
拓海の優しい穏やかな低い声。


めぐるは、
しばらく振りに聞いた弟の声に安堵した。

そして、
張り詰めていた糸が切れたように『元気………だよ……………
っ、ううっ……………』
と泣き出す。


『えっ、
どうしたんだよ!
めぐる、大丈夫か』
拓海は声を掛けた。

めぐるは嗚咽し、
声にならない。


『…やっぱり貴斗ってやつのこと?今は居ないのか?近くに』
拓海は恐る恐る訊ねる。


めぐるは涙を流して『う、うぇっ………』
と泣き続ける。
『やっぱり裏があったんだろ?
怪しいもん、あいつ』

めぐるは即座に『違う!
裏じゃないよっ』と反論した。

『………じゃあ何でお前泣いてるんだよ。
俺は1度でも泣かせたら殺してやるって言っただろ!あいつ許せない』


『裏じゃないのよ、
全然違うの。
違うけど、私には受け入れられないの…
事実かどうか分からないし』

めぐるはやっとしっかりした声で伝えた。

『何?事実って?』


めぐるはかいつまんで、
優から聞いた話を手短に伝えた。


拓海は、
『それは…………
衝撃だな…………。
けどさ。それ、本人から聞いたんじゃないんだろ?』
『うん。幼なじみ?の人……から』

『事実だとして、
めぐるはアイツを嫌いになったか?』

『………ううん……
嫌いになんかならない……。寧ろ………』

『寧ろ?』

『………もしも傷が深いなら、
少しでも取り除いてあげたい』
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