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第4章 その4

『あっ………
また、出たのね！？』


ゆりは少々混乱するようにそう呟く。

『何年も治っていたのに。田川さま、大変申し訳ありません！』
深々と頭を下げる。

鮎美はスタッフ数名に担がれて部屋を出て行った。


俺は全く状況が把握できず、
『体調が悪かったのですか？立川さん……』

『……いえ。完全に治っていたので、
もう大丈夫と仕事に戻ったのですが』


『………わけを、教えていただけませんか？』

ゆりは迷いながら、
意を決したように話し出す。
『立川は夫からの酷い暴力により、
記憶が混濁した時期があったんです。
5年前、立川が20歳の時でしたわ。』
『えっ、旦那は商社マンじゃあ……』
『商社ではありませんが、きちんとした私立大学を出た大手メーカーの正社員ですわ。
立川は、若くして学生結婚をしたんです。旦那は同じ大学の卒業生。エリート中のエリート大学です。当時は仲睦まじく、
理想的なカップルだったようです』


『―――同居を始めたら旦那は立川を支配するようになりました。
日常的な肉体への暴力、言葉での見下し。……旦那の母親も一緒になってしていたそうです。監禁、束縛、……立川は悪い女だと隣近所や友人知人に嘘を吹聴する。周りは羨望や妬みから、信じたそうで。立川は、精神を崩壊しました』