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第3章 その3

田川晴敏（38）は、
まさかの事態に目を白黒させている。


いつものように、
仕事を終えた帰り道を歩いていた。
夜９時。
4月、春真っ只中の時季。

学生は環境が変わり、社会人も異動やら入社式やら誰しもが何かと目まぐるしい日々である。

マンションへトボトボと歩いて帰宅していると、
路地裏から女性の叫び声がした。


（何だ？事件か！）

咄嗟にそう思い、
路地裏に向かう。

すると………
30歳くらいだろうか。

事務服にカーディガンを羽織った、
いかにも『仕事の帰りです』という服装である。

茶色い肩までの髪の毛。


――――地面にへたり込んでいる。