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人妻温泉
第3章 その3
奈津子は、ぽつりぽつりと語り始める。

(私ね、別居を10年している旦那が居るの。
それには、理由があって。
私は幼い頃に実の父親から身体的な暴力を受けたのね。)

俺は黙って聞いていた。
彼女の手が、
少し震えている。


(母親は見てみぬふり。
躾の一つだと考えてたようなの。
具体的にされたことは、
辛くて口には出せないんだけど……

つまり、親から全否定をされていた。
手伝い中にお皿を落として割ってしまった、それだけのことで食事が1週間出ないこともあったわ。

普通に学校には行っていたし、
友達もいた。
だけど……
どうしても男性を信じ切れないのよ。
何かしたら、嫌われるんじゃないか?
何かしなくちゃ、愛されないんじゃないのかな。

努力や自己変革とはまた違った意味合いでね。

いつも男性と付き合うとビクビク顔色見ちゃって…

旦那と出会ってからは、
そういうことはなかったの。
安心して居られた。
だけど、生活を共にしたらやっぱり出てきちゃった。
私が旦那の顔色を見て、
物音がしただけで謝りながら泣くことに疲れてしまって耐えられなくなったの。
それで、別居という形をとっているの。)


(……俺への怒りは?)

(あれね、嫉妬なのよ。
男性と居ると他の女性を見てほしくないの。
誰でも、好きな人ならば多少はあるんだろうけど………
私は独占欲の塊なのよ。

捨てられるのが怖くて、
<いつも見てくれてる>って安心感を求めちゃう。
それが旦那じゃなくても、晴敏さんでも他の男性でも同じなのよ……。
異常なのよ)

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