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恋するアイドル❤︎〜内緒の発情期〜
第6章 禁断の恋
ごめんなさい、八反田さん……。
咄嗟にそう思って、電話を掛け直そうとした。
が、到底ソレは無理だとすぐに気が付く。
だって相手はあの八反田さんじゃない。
通話履歴にならぶ非通知の文字が、空しい気持ちを更に増幅させる。
こちらからは決して繋ぐことの出来ない気持ち。
それは本当の八反田さんにしても、電話の八反田さんにしても、同じなんだ……。
改めて気付かされた。
どんなに私が想っても、悲しい時や、寂しいときに、決してそばに居てくれはしないこと。

「こわいよ……八反田さん……たすけて……逢いたいよ……」

ベッドの上、顔を手で覆って泣き晴らした。
裸のまま、膝を丸め、まるで生まれたての赤ん坊みたいに。
こんなとき、せめてお母さんが生きていたら、抱き締めてくれたのかな?
お兄ちゃんに、追い詰められ死んでしまった私のお母さん……。
お兄ちゃんを見ると、どうしても思い出してしまう。
私の暗い過去。
……だめ。
私、このままじゃ、暗闇に囚われちゃう。
八反田さんに出逢ってから、ようやく見ることの無くなった悪夢に。
耳鳴りが瞳の奥まで響いたとき、傍らに転がっていたスマホが震えた。
非通知ではない番号表示を捉えたとき目を疑ってしまった。
そして迷わずに通話に応じる。

「八反田さん!?」

「お、おー、なんで分かったんだ?すまん、こんな藪遅くに。早坂に、風間の電話が繋がらないと泣きつかれてな。試しに俺も掛けただけなんだが……。なんだ繋がるじゃないか。早坂のやつ……あいついつも早とちりし過ぎるんだよ……。まあ、じゃ、そういう訳で……」

「八反田さん……八反田さん……っ!やだっ!切らないで!切ったらイヤ!!」

偽者ではない、ちゃんと電話番号の表示がされた、本物の八反田さんから電話がかかってきた。
それが嬉しくて、私は思わずまた号泣してしまった。
この世で一番大嫌いなお兄ちゃんに、久しぶりに出逢ってしまった、その反動も含めて。
だってまだ、震えが止まらない。
私は右手首を左手で抑えていた。
じゃないと、うまく八反田さんとお喋り出来そうになかったから。
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