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恋するアイドル❤︎〜内緒の発情期〜
第6章 禁断の恋
「らっしゃい」
八反田さんは街角のコインパーキングに車を止めた。
バックで進むとき、チラッとコチラを見て照れ臭そうにしてから背後に振り向いた彼を格好いいと思うのはきっと、昔からの男女のお決まりの言わば定型文みたいなやつなんだと思う。
そうして連れて行ってくれたのは、事務所から程近い駅前の、屋台ラーメンだった。
「風間さんの、いちばん好きなラーメンの味はなんですか?」
聞かれて、うーんと思い悩む。
だって食いしん坊の私は、醤油も味噌も豚骨もつけ麺だって大好き。
考えて、
「八反田さんは?」
と聞き返した。
「俺?そうだなぁ、俺は醤油かな」
「じゃあ、私も、それ」
笑って答えると、じゃあってなんだよじゃあって。
突っ込みながら肩を揺らしてくれた。
「そしたら、いつもの、二つお願いします」
私が毎回素通りしていた屋台ラーメンのおやじさんに、八反田さんは当たり前のように注文を通した。
慣れた仲なのかおやじさんは、
「はいよ」
ぶっきらぼうに答え、黙々と作業に取り掛かる。
私はというと、見慣れているはずの景観なのに、何故か慣れない景色と慣れないすすけたパイプ椅子にどぎまぎし、辺りを見回してばかりいた。
「こういうお店は初めてですか?」
八反田さんはテーブルに肘をつき、顎を指先で撫でながら珍獣よろしくの私を眺めていたが、やがてそうやって質問を投げかけてきた。
「はい」
「そりゃそうだよなぁ。俺も上京するまでは、こんな風に外食なんてして来なかったしな」
いつの間にか夜中に食べることが多くなってしまって。
八反田さんは嘆き悲しむような表情をした。
「奥さんの手料理、食べないんですか?」
聞くつもりもなかったのに、話の流れでなんとなく口を突いて出てしまった。
「食べますよ。勿論、食べますよ」
八反田さんは、少し慌てたように向き直った。