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恋するアイドル❤︎〜内緒の発情期〜
第6章 禁断の恋

「先程は失礼致しました」
開いたドアの前で私に一礼して、私の表情を伺っていた八反田さんの前髪は濡れていた。
私がじっと魅入っていると、彼も立ち止まったままだ。
入ってもいいですか? どうやらそういう意味らしい。
「八反田さん!どこに行っちゃったのかと思った!お帰りなさい!」
ようやく悪魔に縛り付けられた空間に、白い渡り鳥が舞い戻ってきてくれた、そんな心地良さ。
一瞬にして辺りが明るくなった気がする。
嬉しくなって私がドアの前まで駆け寄ると八反田さんは少し驚いていたけれど、意外にも私を受け止めてくれた。
「そんなに必死になって、どうしたんです?」
突き飛ばされると思ったけど、笑ってくれた。
嬉しい、嬉しいっ!
やっぱり、傍に居て欲しいっ!
たとえ、私のものにならなくても。
こうして笑ってくれるだけで、私、こんなに幸せだもん。
「八反田さん!八反田さん!」
さっきフラれたことなんて頭からすっぽり抜けて、拒まれたらどうしようとか、そんなことも考えなしに八反田さんの胸元に頬を擦りつけた。
「ハイハイ」
八反田さんはそんな私の頭を撫でてくれる。
もう、付き合えなくてもいい。
エッチも出来なくていい。
ただ、こうして私の想いを拒まないでさえ居てくれれば。
そう思ったとき、私は八反田さんの胸元に体を預けたまま、例の間仕切りの方に視線を飛ばした。
紫色の毒々しい不穏な空気が、隙間から垂れ込めるのが私にはハッキリと見える。
そうして、今度は八反田さんを下から見つめた。
「本当にどうしたんです?」
八反田さんは終始にこやかなまま、首を傾げていた。
やっぱり素敵だな……。
その顔を見て私はある覚悟を決めたのだった。
「八反田さん、ちょっと、場所をかえませんか?」
この部屋は二人きりではないことを、八反田さんは知らない。
私はどうしても八反田さんを守りたかった。
この人の誠実さや信義に背いたとしても。
私の無駄な恋心のせいで、八反田さんの人生を歪ませたくないから。
……悪魔が、影からひっそりと私達を覗き見ている気がした。

