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恋するアイドル❤︎〜内緒の発情期〜
第7章 おなにぃ中毒
それでは、と、サラッととんでもないことを口にして、彼は私の腕からするすると危険を回避した。
いよいよ仕事に向かってしまうんだ。
荷物や車のキー、更にはあのえんじのストライプをまとめて持ち、よし、と人差し指でテーブルを確認する姿に、私が恋した出会って間もない八反田さんを垣間見る。
もう、昨日の夜に姿を見せてくれた恋に疎い八反田さんは、息を潜めてしまう時間なんだ。
私はどっちの八反田さんもすき。
だけど、なんだか、寂しい。
だってきっと、今日が始まったら、八反田さんはもう……。

「ご褒美下さいっ!4回、出来たら!ちゃんと、ご褒美……」

もう2度と私に優しくしてくれなくなってしまう気がして……。

「ふむ……。忘れてしまいそうですが、聞くだけ聞いてあげましょう。何が良いんです?」

「えと、あのっ、あ、頭を……っ!撫でて……欲しい、です……昨日みたいに……」

「それだけですか?」

「え?ぁっ……はぃ……」

「かしこまりました」

彼はそれだけ言ってほんの僅かながら頷き、ドアの向こうに長い足を踏み出した。

「ああ、そうだ。忘れてました。ここに染みがあることは、一日気付かなかったことにしますから、ご安心下さい」

スラックスの太股付近に、白くカスみたいに乾いた染みがある。
それを見せつけながら八反田さんはドアの横から振り返っていた。
私が赤面すると、再び片方の口角を持ち上げた八反田さんは続けた。

「それと最後に。学校に遅刻したら、その時点でご褒美はありません。では失礼」

タイミングを見計らった八反田さんは、ドアを手放し、壁の向こうに見えなくなってしまった。

「あーっ‼︎そうだよ学校‼︎遅刻しちゃうっ‼︎」

時間は7時40分を回ったところだった。
事務所からなら今から急げば充分間に合うだろう。
けど、制服どうしよう……。
着替えながら八反田さんに頂いたフルーツ風味のお水を飲み、サンドイッチを齧りつつ考えていたところで、閉められたはずのドアがまた開いた。
八反田さん? なんて思ったけど、案の定そんな結果は得られない。
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