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恋するアイドル❤︎〜内緒の発情期〜
第2章 原因は黒いパーカーでした
手招きされて、とりあえず部屋を出る。
八反田さんに近付けて嬉しい。
反面、さっきパーカーをぶん投げたせいで、物凄く、気まずい。
私はスタッフルームのすぐ脇の通路でもじもじとひたすら俯いていた。
それを私の頭1つ分上から見下ろしていた八反田さんは、観念したように口を割った。

「このパーカー、欲しかったらやるぞ……」

そして同時にそれを差し出してきた。
そ、それってつまり……。
私の気持ちを察して……?

「……は、八反田さん?」

「これ、限定のだもんな……」

なんて期待した私がバカだった。

「えっ」

「まさかお前もダンガム好きだったとはな……。添い寝するほど欲しかったんだろ?俺もさ、手に入れるの大変だったんだ。欲しいって素直に言えなかったお前の気持ちもわかる!プレミア物だしな!でもな……俺、実は同じのもう1個持ってるし、これはお前にやるよ!連合軍の紋章シリアルナンバー入りパーカー‼︎」

それから、ちょっと照れ臭そうに、でも楽しそうにダンガムの素晴らしさを語る八反田さんが、どうしても、可愛いかった。
ロボットアニメのことは、正直よく分からない。
にも関わらず、熱弁する八反田さんを見ているのが嬉しくて。
心地よくて。
本当は知りません……それどころか、欲しい理由はそうじゃないのに……なんて言えないまま、ただただ相槌を打った。

……私、やっぱり八反田さんが好きだ。

こんな時にそんなことを自覚してしまった私は愚かだと思う……。



❤︎



「オロカモノ……」

「分かってるよぉ……もーるかちゃん!どうしてそう揚げ足とるのー!」

「ちがう!みゆりじゃない!八反田がっ!だっ!」

そして、みゆりは1つも悪くないと、るかちゃんは続けた。
そうかな?
今、私が落ち込んでいるのは、全部私のせいだと思うけれど。
本来なら貰えて嬉しいはずの黒いパーカー。
どんな経緯であれ、ゲット出来て嬉しい。
はずなのに。

同時に、私はこんなにも……。

好きなのに。

相手にもされてないって……。

気付いた……。

全く眼中にないんだって……。

それが、とてつもなく、悲しかった。

もしかしたら、これからも。

目に映ることはない?

そう考えたら……。
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