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恋するアイドル❤︎〜内緒の発情期〜
第2章 原因は黒いパーカーでした
「おはよーございまーす。って、あー、昨日のあざとい子じゃん。……何泣いてんの?店長にクビでも宣告された?」

そんな折に。
昨日私を突き飛ばした、3人のうちの主犯格にして張本人、大前胡桃が気だるそうにやって来た。
テーブルに投げ置いたバッグから、煙草を取り出す。
確かに私とるかちゃんより2つ上だから分かるけど。
アイドルなのに吸うの?
なんて言ったら偏見かなぁ?

「るさいわね、今はあんたに構ってらんないの!こっちは大事な話してるんだから!」

るかちゃんが噛み付く。

「なにそれ。心配してやってんのに。リーダーとして」

「はぁ?誰がリーダー?」

「あたし」

「ぶっ!なに勝手なこと言ってんの?」

「勝手じゃないわよ、だって八反田店長に言われたんだもの。大前は実力も人気もあるし、リーダーシップもあるようだから頼むって」

泣いてばかりの私も、この時ばかりは踏ん反りかえった性悪美人を羨まずにはいられなかった。

「今日はね、八反田店長に呼ばれてたの。みんなより早く仕事を教える必要があるから、30分早く来いって。だからあんたらと話してる暇ないのよ。ジャネー!」

ピンクのスワロで飾られた持参の携帯灰皿に煙草を捩じ込んで、大前さんは私達の前から消えた。
ハッとした。
どうしよう。
先越されたとも思った。
色んな意味で、先越されてるんだって。
大前さんは、きっとそんな風にも思ってないけれど……。

「あのブリリアントピンク女がリーダー!?八反田の奴、やっぱ本当女見る目ないんじゃ……」

「確かめなくちゃ……」

「え?みゆり……?」

るかちゃんの言葉は、ごめん、この時あんまり耳に入ってなかった。
私は八反田さんから貰ったパーカーをゴミ箱から拾いあげ、ギュッと抱き締めた。

良かった……汚れてなくて……。

思ったとき、私はスタッフルームを飛び出していた。
通路を駆け抜ける途中、パーカーに袖を通した。
私、やっぱりダメだ。
ごめんね、るかちゃん。

「八反田さん!」

事務室に飛び込むと、大前さんと八反田さんが身を寄せ合ってプリントを確認し合い、何やら話していた。

「リーダーってどうしたらなれるんですか‼︎⁉︎」

たぶん、無我夢中だった。
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