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恋するアイドル❤︎〜内緒の発情期〜
第8章 躰の疼き……
「風間の知り合いか?」
「え?あ、はい……」
「dolceに入りたいとかそんな話か?」
「そ、そうです……お金ならいくらでも出すからって……」
「……どんな関係だ?」
「学校の……クラスメイト……」
「なるほど?ならお前もちょっと来なさい」
顎で促され、長い足を踏み出してさっさと先を歩いていく八反田さんに小走りでついて行く。
……それだけで、涙が出そうなくらい嬉しかった。
八反田さんの匂いが、通った箇所から私に流れてくるんだもの。
dolceの出入り口のドアを押し開いた時、運転手のお爺さんが車から降りて、深く腰を曲げて八反田さんにお辞儀で迎えた。
「初めまして。私dolceの店長をしております、八反田と申します」
先に名刺を差し出したのは八反田さんだけれど、彼も深くお辞儀をするのを忘れなかった。
「はい。わたくし、黒咲様の身辺の管理一切を任されております、参千寺と申します。この度は奥様からの申し出で、是非、黒咲様をdolceにお連れしますよう承っております故、何卒、ご配慮お願い頂きたく存じます」
人の良さそうな垂れた眉と目尻を持つお爺さんは、皺枯れ声で八反田さんの名刺を丁寧に受け取り、紳士的な黒服に身を包みながらもそれに見合うだけのマナーが指先まで行き届いた微笑を浮かべた。
ギャルソンの八反田さんもこれに得意の営業スマイルで切り返す。
「奥様とはどういった……?」
「それは……」
「参千寺さん、それは僕が話そうか」
黒咲くんが自ら後部座席から降りてきた。
優雅な物腰だ。
マンガやゲームの中の王子様みたい。
だからこれはまるでおとぎの中の世界。
クリーム色の高級外車に白いお城が舞台の中心で、ロマネスクな会話を繰り広げる彼等に、ただし私だけが圧倒的に浮いた存在の滑稽なファンタジー小説。
「僕のゴージャスは日本最強の貴婦人なのです。……まあ口にするより信じて付き合ってさえくれれば、あなたも損はないと思いますが」
手渡した名刺。
受け取った八反田さんはそれを見て細い眼を驚くほどかっと見開いた。
「……これ、本物なのか?」
「そう思うなら直接電話してみて下さいよ」
「これ系の詐欺は手が巧妙だ。俄には信じられない」
「はは、今ここに、その本人いないですしねー」
「…………」