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恋するアイドル❤︎〜内緒の発情期〜
第3章 秘密の特訓❤︎
その後も私はひたすら接客のローテーションを反復していた。
見えないお客様を席に案内して、おしぼりを出し、予めテーブルに備えてあるグラスにガラスポットからお冷を注ぎ、オーダーを受ける。
そこまではいいのに、どうしてもトレンチでの持ち運びがダメ。
カフェの基本中の基本なのに……。
器用なるかちゃんはとっくに合格を貰って、今は最後のお会計業務を習っている。
るかちゃんなら、お釣りも間違えなさそう。
私は……。
だんだん自信がなくなってきたよ。
八反田さんはあれからすぐにやってきた電気工事の業者の人と照明の確認作業をしている。
相変わらず何故かそっちの方に転がるスーパーボールを、八反田さんはその都度拾ってくれる。
でも、いい加減呆れてるよね。

「何度も何度もごめんなさい」

ボールを受け取りに行くとき、私はもう顔をあげられなかった。

「……そうですね。埒があかないようですので、そろそろ口を挟むとしましょう。そのまま事務室に来てください」

八反田さんが、工事のおじさんに会釈してその場を離れた。
その際に、私が持っていたトレンチを丸ごと奪い、左手に乗せた。

「……ああ、そういうことですね」

八反田さんは乗っていたプラスチック達を微妙にずらし、そして事務室に歩き始めた。

「か……」

かっこいい……と思わず口を割りそうになった。
スーツ姿でトレンチを持つ八反田さんは、高級クラブか何かの黒服さんみたい。
ドラマの中に出てきそう‼︎
背筋もピンと、すらすら歩いた八反田さんはそのまま事務室のテーブルにたどり着くと給仕を終えた。

「お待たせ致しました。dólce特製ホワイトハートパフェでございます」

私に向けた営業スマイルも完璧である。

「ほわぁー‼︎‼︎」

感動してアホみたいな声が出た。
でも考えてみて欲しい。
100回近く繰り返してもたったの1度も完璧に出来なかった私が向ける今まさに初めて触れたであろうトレンチを難なく使いこなしてしまった想い人への尊敬の念というものを‼︎
なんて熱くなってしまったけど、私がド下手なだけなのはもう分かってるの、ほんと。
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