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恋するアイドル❤︎〜内緒の発情期〜
第9章 それは禁断の果実

「なんだってこんな事に……」

「お、おしゃけ、じゅしゅ……にゃか、いれりゃれ……」

「みゆり、おまえ何言ってるかさっぱり分からん」

「うえーん!」

「とりあえず城田の車に行くぞ!」

一つ言葉を投げてから、赤ん坊を抱くが如くひょいと軽々しくるかちゃんを姫抱きにした八反田さん。
彼女の長いツインテールがひらりと靡いて本当にお姫様みたいだった。

「いやらぁ!それわたしもぉ!」

「分かった!分かったから引っ張るな!流川が落ちる!」

駄々を捏ねた私を八反田さんが嗜める。

「後でしてやるから!」

「うにゃぁっ!……じぇったい、じぇったいでしゅよぉ……!」

もうてんやわんや。
なのに城田さんの車にそうして三人辿り着いたときには、ワゴン車の前でサングラスを掛けたknifeさんが優雅に私達を待ち受けていたから、八反田さんの顔付きが変わった。
無視を決め込んだ八反田さんに、knifeさんが声を掛けた。

「やっぱりおっさん、あんたも来たんだ。暇だねぇ」

八反田さんは何も言わなかった。
knifeさんが挑発する。

「僕、あんたきらいなんだよね。人生通してなーんも悪いことしてませんてツラしててさ」

尚も彼は続ける。

「あんたが居なけりゃ、みゆりちゃんの処女、今頃楽しく奪ってやれたのに」

――その時おっさん、どんな顔すんのかな?

八反田さんの眼が鈍く閃光したのを私は見た。
矢先、意識があるのかないのか判断しかねる状態のるかちゃんを見て慌てた城田さんが、運転席から降りてきた。
動揺しすぎて一度ネルシャツの裾をドアに挟んでしまったから、また余計に混乱する姿が城田さんらしい。
そんな彼にるかちゃんを丸ごと預けた八反田さんは……。

神速。

knifeさんの首元を掌で押し込んで、ワゴン車の側頭部に背中ごと張り付けた。

「てめぇが演者じゃなかったら、今ここに転がしてやってるとこだ!」

「げほげほ……いきなり何す……あんた、この僕にこんな事していいと……」

「いいと思ってるからやってんだよクソヤロウ!ウチの娘達の為にテメェの不祥事も同時に揉み消してやるんだぞ!これぐらいで済んで良かったと思え‼︎」

「うぐぅ……」

そのまま八反田さんはknifeさんの首を片手で絞め上げた。
こんなに怒気を隠そうともしない八反田さんは初めて見る。
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