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恋するアイドル❤︎〜内緒の発情期〜
第9章 それは禁断の果実

「風間、起きたのか……」

「は、はい……」

返事をすると同時にぐぅぅとお腹が鳴った。
昨晩知らず知らずお酒を飲まされたせいで空腹を満たせずにいたからだ。
音聞かれたかな? 恥ずかしい……。

「はは、すげー音。大丈夫じゃなさそうだから、何か買ってきてやるよ」

八反田さんが私に背を向けて、着替えるからあっち行ってろと言葉を寄越した。
私もいく!
そう思ったけど、いま報道関係者に見つかったら色々面倒なことになるのかな?

でもせっかくそばにいるのに、離れたくないよ……。

ステンレスの棚にたたんであった自分のシャツを握りとった八反田さんを背後から捕まえたとき、足元に転がっていたアダルトDVDが彼の足元を掬った。

「お、おい!?」

態勢を立て直そうとした彼が掴んだ積み上げられた段ボールが崩れ転がる。
中から顔を出したのはどれも目も当てられない卑猥なものだった。

「うーん……」

木の枝を踏み締めたような音が立ち込めて、るかちゃんを起こさないか一瞬心配してしまった。

「いてぇ……」

散らばったDVDの上に、八反田さんは仰向けに倒れていた。
更に積み重なるように、彼の腹の上に私が丸ごと乗っかっていた。
組み敷いてしまったことに慌てた。

「ご、ごめんなさい……!」

動転して腰を退けた私。
でも八反田さんは何故か、そうする私を拒むように腕を思い切り引いてきた。

「!?」

胸元にぐんと抱き寄せられる。
甘い香りが鼻腔を擽った。

「怪我はないか……?」

また秒針の音が耳に届けられた。
どんどん私の熱い鼓動と重なっていく。
近づく互いの影。
るかちゃんは眠ったまま。
甘酸っぱい匂いが私を包む。
朝鳴きの小鳥達の囀りが私を後押しする。
八反田さんの体温が伝わってくる。
光を強めた朝日に今度こそ碧く部屋が照らされた。

「……お前が無事で本当によかった」

ふたり唇を求めていた。
半開きにして招く意思を見せると、確かに彼も歯列の隙間を縫って私の舌の味を確かめようとしていたから分かったことだ。
でも彼はいとも容易く私の横顔を通り過ぎた。
もう一度強く抱き締められたのだ。
それでも彼から滲み出るセリフは物悲しいものだった。
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