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恋するアイドル❤︎〜内緒の発情期〜
第9章 それは禁断の果実

「どうなったんですか!」

私が食ってかかるように尋ねると、彼は視線を柔和な色に染めた。

「向こうの事務所に潰して貰った。ま、当たり前だけどな。にしてもこういうとき事務所が金持ちだといいよなぁ。下働きが本格的に下働きしなくて済むし」

首を回す八反田さんは、ごりっと大きく凝りをほぐして、あー今日も仕事するかと伸びをした。

「た、ただいま!八反田さん!しゅしゅしゅ、秋純に顔出して、るかちゃん達のネガ、全部引き渡してもらいました!この件は、手を引くって!」

「おお、でかした城田!」

そこに城田さんが慌ただしく帰ってきた。
アデイダスの靴を放り投げた彼は大きな封筒を大事に抱えていた。

「で、でも……」

「まあ皆まで言うな、分かってるから……」

城田さんは編集されたばかりの文藝雑誌を中から取り出し、最初のページを開いた。
そこには悲しいかな……。

「silverのknife、路上で暴行受け全治一ヶ月か⁉︎」

見開きいっぱいに、knifeさんがワゴンのフロントタイヤ付近に尻をついて、喉元を苦しげに押さえている写真が掲載されていた。
八反田さん自身は芸能界に携わっているとはいえ一般人。
写真には目隠しが掛けられていたが、見る人が見たら彼だと判断がつく横顔も、そこに交じっていた。

「八反田さんこれ……わざとやったんですか⁉︎」

思わず尋ねていた。
私達を守る為に、意図的にやったんだってすぐに気が付いた。

「まあ……これぐらいしなきゃ、年がら年中著名人に張り付いてるあの人達も納得しないからな。金じゃ動かない熱い人間との闘いなんだよ、世の中は」

どうせ撮られるなら、もっとピースなりしとけばよかったなぁ……と、声を立ててせせら笑う彼。
きっと無理してるんだと感じた。
私にはわかる。
ずっと八反田さんを見てきたんだもの。
こんな暴力を振るう人じゃないのに。

「ごめんなさい……」

「なんでお前が謝るんだ?お前達はなにもしてないだろ。スカーレットプロのスタッフとして、おまえ達を守るのは当然だ。だからそんな顔をするな」

八反田さんは私の頭を撫でて、珍しく歯を見せて笑った。
悔しかった。
この人にいつも無理をさせてしまうことが。
泣きそうになる私を見て、八反田さんは話を差し替えた。
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