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恋するアイドル❤︎〜内緒の発情期〜
第9章 それは禁断の果実
一人は尽く精神を孤独にさせる。
ダイニングキッチンを通り抜けリビングルームを目指したが、たどり着くとすぐバッグを投げ出してソファに真っ直ぐ崩れ落ちた。
微睡みが襲う。
このまま眠りそう。
眠りたい。

(どちらかを選べというのなら俺は……)

暗闇の中、八反田さんの台詞が浮かび上がり私に襲いかかった。
それを振り払って起き上がる。

「カーテン洗おう!!」

自身を奮い立たせる他なかった。
それに今眠ったら、夜中に目が冴えて余計に体調を悪くしてしまう。
せめて夕方を過ぎるまでは頑張らないと、いよいよ不摂生が祟ってしまいそうな最悪は目に見えていた。

リビングとキッチンのカーテンを集めて、二階にある自分の部屋のカーテンを取り外した。
あとはお父さんの部屋とお兄ちゃんの部屋だ。
お父さんの部屋はたまに片付けに入っているから問題はない。
靴下を放り散らかしてあったり、スーツを脱ぎっぱなしにしてたりするから、掃除をする為だ。
煙草も吸うから内装が黄ばんでいるし、書類からはカビの匂いもする。
だからたまに換気が必要で、私しかそれをする人間がいない。
それは構わなかったが、問題は趣味で集めている骨董品が邪魔なことだ。

「あとは……」

お父さんの部屋のカーテンを両手に持ち、引き摺りながらお兄ちゃんの部屋の前にきた。
嫌ならやらなければいい。
そんな選択肢もあったが、どうしても定期的に一番この部屋を片づけたかった。
ここは元々お母さんの部屋でもある。
汚されていないか確かめる気持ちもあった。
L字型を伏せたみたいな取ってをつまみ降ろし、ドアを開けた。
雷雨でも来そうな淀んだ空気が私の前髪を掬う。
カーテンはそよいでいた。
窓が開いている。
何故?
思いながら近づいた。
ガラス戸を閉めようとすると脈打つカーテンに視界を遮られ弄ばされた。

「もう!」

手を伸ばして強引にスライドさせるとカラカラと鳴った。
鍵を閉める。
生気を失ったカーテンのレールから繋がった輪を外す。
一つ、また一つ。
その度に忍び寄る悪意の足音に私は気づかなかった。
また一つ、また一つ。
また、一つ。
遂に最後の一つに手を伸ばしたとき、私の口元には狂気という名の黒い影があった。
声は出しようがなかった。
呼吸器全てを覆われて死の恐怖をそこで既に感じていた。
後ろから抱き付かれる形で片側の胸を蹂躙された。
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