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恋するアイドル❤︎〜内緒の発情期〜
第9章 それは禁断の果実

「良い刀だ……持ち主に応えるのか」
王子様は深く唸った。
「てめぇ、騎士気取りか!」
叫んだ男は王子様を振り払った。
たとえ壁に打ちつけられても王子様は怯まなかった。
寧ろ彼の目の朱は凄味を増した。
「それは……ちょっと違うな」
刀を構えた王子様、その周辺の空気の流れが変わった。
どうしてそんなことが出来るのかも私は知らなかった。
襲い来る男の剛腕。
それを獅子のような俊敏さでもって撫で切りにした王子様。
弾かれた悪人。
虚をつかれた彼の手首に、更に風を走らせる。
一振り。
刀を斬り下ろした。
手首は引き千切れ……たりは当然しなかったが、鈍い音がした。
ぶらりと指先が垂れ下がり途端に青紫色に変色していく。
大男は悲痛に尻餅をついた。
「サムライ気取りだよ」
再び空を斬って構え直した王子様には余裕があったのだろう。
ひらりと宙を舞うように一つ回転して私と視線を合わせた。
世界が、刻が、止まって見えた。
なんて綺麗なんだろう。
まるで剣舞を踊っているように、刃が男の首筋を着実に捉えていた。
薄皮一枚。
彼の命はそこで繋がれたのだ。
「ああ、久々だから腕が落ちたな」
王子様は、男の首から出るか細い血液が伝うのを見て自嘲した。
「もう少し手前で止める予定だったんだが」
「くそう!ふざけんな!なんでこんな作り話みたいなやられ方しなきゃならないんだ!」
「心配すんな。お前の方こそ作り話みたいだぞ。アイドルをレイプなんて」
「うるせー!ずっと見守ってきたんだ!キミの原点を知ってる!キミがアイドルになる前からっ!電車の中で男達に嬲られ始めた頃からっ!気弱な子だと思ったんだ!僕と同じだって!アイドルになったって知って大金を注ぎ込んできたのに!なのにっ!なのになんで!こいつなんだ!だってこいつはキミのっ……!」
「しつこい」
王子様は日本刀で彼の脳天を討った。
成敗されると本当にきゅうと音をあげるのだなとちょっと笑いそうになる。
私を振り返った王子様はおちゃらけた。
「案ずるな。峰打ちだ」

