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恋するアイドル❤︎〜内緒の発情期〜
第10章 裏切り
そうか。
八反田さんも、この事件をチャンスだと感じているんだ。
あんなに心配してくれたから、こんな事で売り出そうなんて考えないと思ってた。
炎上商法なんて、dolceの目指すところじゃないって。
でも……。

「仕事のないお前らなら、1週間もありゃ踊れるようになるだろ?」

八反田さんは採点が終わると、メンバーの言葉を待たずニヒルに付け加えた。

「踊れないやつはおいてく」

それはつまりテレビ出演時には排除させられるという意味だった。
やるしか、私達に道はない。

だから私を含めdólceのメンバーはその日から休まずダンス練習に励んだ。
学生は学校を休みアルバイターは仕事を休んだ。
dólceの営業はメンバーが交代制で回した。
くるみちゃんやその取り巻きの二人、神巫さんと海神さんは殆どdólceにいたはずなのに、いつの間に覚えたのか振り付けをマスターしていた。
デモテープからは当初、私達ではない女性の声がしていたが、1週間もすればそれはその三人の声に変わっていた。

八反田さんは言う。

「マスターした奴から録音参加だからな」

目頭を抑える彼の顔は疲労が滲んでいた。
そして私は見た。
私だけが、気が付いたかもしれない。
彼のスーツの袖から覗く右手首に包帯が巻かれていたこと。
その周辺が赤く、爛れていたこと……。
今までそんなことあっただろうか?
恐らくないと思う。
あれは、なに?
でも、今は……!

「はいストップ!風間さん、あなたやる気あるの?」

時間のないメンバーの為に派遣されてきたダンスの先生に私だけが叱られていた。
それもそのはず。
全く踊れないのは私だけ。
一日6時間以上1週間もダンス練習をみっちり叩き込まれれば、皆それなりに形になっている。
はずなのに私はまだ満足にステップすら踏めていない。
ダンススクールには常々、足繁く通っていたけれど……。
そもそも1週間でマスターなんて運動神経ゼロの私には到底無理な話な訳で!

「みゆり!そこはワンツーワンツースリーフォー回して回してバッキュンだよ!みゆりのはワンツーワンツーツーになってる!」

「そ、そんな風に言われても、分かってても体が追いつかないんだよるかちゃん!」

「それでも覚えないとみゆり!テレビ出れないぞ!」
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