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恋するアイドル❤︎〜内緒の発情期〜
第10章 裏切り
「八反田さんて、dólceのなんなんですか?」
「店長……」
「知ってます」
「兼チーフマネージャー」
「それも、名詞に書いてあります」
「兼シークレットプロデューサー」
喰い気味に答えられて、驚きの声も出せない。
「ゴーストライター、みたいなもんか」
八反田さんは、左手でペットボトルのお茶を飲んだ。
べこっと少しだけ歪む音が鳴った。
「八反田さんは、秘密が多すぎますよ」
「そうか?これくらいは普通だろ」
「普通じゃないです!コーヒーだって!飲めないって聞きましたもん!」
「ああ、飲めない」
「じゃあ、なんで!?あの時……」
「もうやめてくれないか……」
「え?」
「……そうだ……今思えば、そうだったんだよな。俺は……あの時から……」
Bメロのラインにのせて、メンバーが試行錯誤を繰り返し踊っているのを八反田さんはじっと見つめていた。
立ち位置を変えたり、編成を変えたり。
音楽監督が納得するまで彼女達が懸命に踊り続けるのを見守っていたはずなのに……。
八反田さんの眼が紅く私を躙る。
燦めいたのを恐ろしいとさえ感じた。
「八反田、さん……?」
「そんなに色々知りたいなら説明してやるよ」
私は親友のるかちゃんが華やかなステージでステップを踏むのを全然見届けてあげれぬまま、八反田さんに腕を引かれた。
「あっ……」
「あの時……取り乱してるお前の傍に居てやりたかったんだ……。何より、お前の前でカッコつけていたかった。……この顔で甘いもんが好きってのも恥ずかしいもんなんだよ……」
「ま、待って……八反田さん……こ、ここじゃ……」
「それにワザとコーヒー置いとけば事務所の連中は誰も俺を疑わないだろうと踏んでのことだよ。それくらい分かれ」
包帯の巻かれている腕を目で捉える。
隠しきれない火傷跡が所々あった。