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恋するアイドル❤︎〜内緒の発情期〜
第10章 裏切り
ずるりと抜け出る男根。
ぽたぽたと落ちる精液。
まるで排尿でも終えたかのようにさっさと居なくなってしまった八反田さん。
男子トイレに取り残された私。

その寂しさを今の寂しさに重ねるのだ。

これはこれで妄想の八反田さんが言う通り手早く済ませられるし、激しい快楽を瞬時に得られる手軽さがある。
けれど……。
終わったあと、もうあの電話先の優しい声が聞けないと思うと……。
近づくことさえ拒否される現実がやってくると考えると……。
吐き気を催すほど涙が出た。

……きっと疲労がたまっていたんだ。

その後、しばらくは仕事に没頭するふりをしていたけれど、とうとう淋しさやストレスに耐えきれなくなった。
そして勇気を振り絞って八反田さんに電話をかけてみたりもした。
……出てくれるどころか折り返しすらなかった。
私のことはもう忘れてしまったのだろう。
嫌ってしまったのだろう。
だって会いたかったら時間を作るし、電話くらい掛け直してくれるでしょう?
最低限メールをくれたりするんでしょう?
私の中の透明な八反田さんに話しかけたりしたけれど、最近は彼も無表情のままだ。

……残念だけど私達の関係は本当に途切れてしまったらしい。
そう思わざるを得なかった。

なのに、なんでかな?
今日もあの人のことをこうもいっぱいいっぱい考えてしまうのは。
頭をふるって想いを飛ばしてみても、舞い戻ってくるあの笑顔。
絶対叶うことのない恋煩い。
これじゃあファンの人に怒られてしまう。
今だって握手会のイベント真っ最中なのに……。

「みゆりちゃんだ!ホンモノのみゆりちゃんだ!」

「こんにちは!応援してね!」

当たり障りのない台詞を口にするのには、ようやく慣れた。
一ヶ月以上色濃く日本全国を廻れば嫌でもそうなる。
ラストの今日は東京でのファン感謝祭だった。
だから、ちょっとだけ期待していた。
八反田さんがdolceの店長として、イベントに顔を出してくれること。
でも、彼と逢えることは、それからも一切なかった。

もう8月も末。

気づけば夏はすっかり終わろうとしていて、イベントの後、私達はセカンドシングルのレッスンに励んでいた。
事務所のオフィスビルの上には、レッスンスタジオ意外にもエステサロンやトレーニングジム等がある。
夜、それらから帰宅する時どうしても衝動を抑えきれなかった。
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