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恋するアイドル❤︎〜内緒の発情期〜
第10章 裏切り
「早坂さん、止めて下さい。私、あそこでラーメン食べて帰ります」
「あら、美味しいの?でも太るわよー?」
くすりと笑った彼女……いや彼? はますます痩せていた。
マネージャーとして他の同期達より頭一つばかり抜きん出ているこの人は、それぞれの担当のスケジュールに合わせて毎日動き、へとへとなのだろう。
けれど、私も含めそれぞれ確実に知名度を上昇させているから凄い。
「この時間の油物は控えてたけど……でもみゆりが行きたいなら一緒に行ってあげる」
「心配してくれるのはうれしいですけど、大丈夫ですよー。あそこの店主さん優しいですし、疲れてるんですから先に帰って下さい」
「駄目よ、それは。あの時だって私、一緒についてあげれなかったのに……」
「それはもう過ぎたことですよ」
「じゃあ私もラーメン食べたいからってことにしといてよ」
そうして早坂さんはウィンクして車を路肩に停めた。
あの日以来――早坂さんに告白されて以来――この人はずっとこんな感じだ。
できる限り私の傍に寄り添おうとしてくれる。
「駐禁とられません?」
「すぐ帰るし大丈夫じゃなぁい?」
でもそれ以外何も変わらない。
私を好きだったとして、早坂さんが男に戻ることは依然としてなかったのだ。
だから私も変わらないふりを続けている。
そうして彼と連れ立ってのれんを潜った。
醤油と味噌、豚骨スープのミックスされた、空腹時には抗えない魅惑的な空気が醸し出されている。
ここは過去に八反田さんに連れて行って貰った屋台ラーメン屋さんだ。
「らっしゃい……」
あの強面の店主さんに声をかけられる。
でも私の顔をみるなり真顔でばちばちと瞬きをされ……面食らう私をさておき、とある席に視線を送った。
そこに座るのはスーツ姿のえんじ色ネクタイさん。
ウソッ!!?
私は目を疑った。
「八反田さん!?」
彼はぼぉっと生ビールを傾けながら、湯気のなくなった餃子をつついていた。