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恋するアイドル❤︎〜内緒の発情期〜
第10章 裏切り
「お、お元気でしたか?」

色々聞きたいことや話したいことがあったのに、それが全部爆発して吹っ飛んだみたいに当たり前の挨拶しか出て来なかった。
八反田さんは、まぁ、と静かに答え、残っていたビールを一口、ゴクッと飲み込んだ。

……特に話すこともないようで。

彼はそれ以上私に何かを話し掛けてくることもなく、何となく気まずい雰囲気が作られていく。
それを見かねたのか、呆れたのか、隣の早坂さんがねぇねぇと肩を叩いてきた。

「どれがお勧めなの?」

「え?しょ、醤油……かな」

「そうなの?あたし味噌派なのよねー」

「と、というより、私、まだ一回しか食べたことなくて……」

「えー?じゃ、一緒に味噌食べてみましょ?おじさぁーん!味噌二つねぇ!あと、ウーロン茶二つ!」

「……はいよ」

え? 私、八反田さんの好きな醤油が……と口にするより前に、親父さんは黙々と作業に取り掛かった。
アイスピックで氷の塊を割り入れ、ウーロン茶が注がれる。
二つ手渡された頃には早坂さんは、

「うーん、寡黙ないい男ね」

ほっぺに手を添えてほの字になっていた。

「そいつぁどうも。綺麗な顔したお兄ちゃん」

「きゃ!ほら、誰かさんと違って、いい男はちゃんと私のことを褒めてくれるのよー。誰・か・さ・ん・と・違・っ・て・ね」

早坂さんは私を飛び越えて、明らさまに敵意の視線を飛ばす。
棘を含むのはどうしてかなんて聞ける訳がない。

「……飴と鞭って言葉、聞いた事ないのか?」

「はっはぁん、そう来ますかぁ……それならそれでいいですけどぉ。でも少しくらい素直になったほうがいいと思いますよ?ねー、みゆりー!」

「え?私!?なんの話!?」

「あっそうだ!みゆり!餃子も一緒に食べましょー?一緒にー!素敵なおじ様!餃子も一皿追加ね!」

「はいよ」

「こっちも生中追加で……」

「はいよ」

ちっと舌打ちしたのが八反田さんの方から聞こえて。
2人ってこんなに仲悪かったっけと考えてしまいそうになるけれど、早坂さんは何故かいつも以上に私に触れてくる。
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