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恋するアイドル❤︎〜内緒の発情期〜
第10章 裏切り

「その右腕の怪我。この子にあまり心配かけないでくれよ、って話。活動に影響出るから……。最近、マジで元気ないんだって。あんたに会えないから」

「は、早坂さんっ!?」

「だってほんとのことだろ?」

早坂さんは、頂きまーす! と無邪気に続け、味噌ラーメンを啜った。
美味しいーって、ハート付きの語尾で片頬を抑えるこんな時は嫌になっちゃう。
だって、器用に使い分けるからずるいんだもん。

「そうじゃなかったら、俺、奪い取りますよ?」

女である早坂さんと男としての早坂さんとを。

「さ、さっきから早坂さん、何突拍子もないこと言ってるんですか!?」

ずぞぞっと麺を啜る彼は、なんでもないことのようにとんでもない発言をした。

「今更みゆりも驚かないでよ。好きって前に言ってあるでしょ?」

「そ、そうですけども……」

「はい、まずはラーメン食べる!伸びちゃうわよ!せっかく美味しく作って貰ってるんですから!」

早坂さんは再び私のお姉ちゃんに戻って、割り箸を割いて手渡してくれた。
仕方なしに一旦話をお預けしてラーメンに相対する。
一口食べればオルガスムス。
私達は夢中で麺を啜った。
けれど八反田さんはそうもいかなかったようで。
ほとんど一気飲みに近い勢いでおかわりの生ビールを三再び胃に収め、その上更に追加で日本酒を注文していた。
手酌しようとする彼に私は慌てて尋ねた。

「あの、お注ぎしましょうか?」

パパのお酒が無くなったら注いであげなさい。
ママの言葉を思い出し咄嗟にそう口にしたけど他意はなかった。

「…………」

八反田さんは顔色を変えず私を見て、黙ってお銚子を置いた。
傾けたままのお猪口を見るなり私もまた黙ってお酌をする。

「そうしてみると昭和の若い夫婦みたいねぇ。ドラマチックだわぁ」

早坂さんが餃子のお皿を受け取って、一つもぐもぐさせながら私達を眺めていた。
一体この人は何がしたいのだろう。
からかいたいの?
八反田さんへ日頃の仕返し?
それとも本当は……。
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