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恋するアイドル❤︎〜内緒の発情期〜
第10章 裏切り

「早坂、悪いが俺は本当に疲れているんだ。冗談めかしたいだけなら相手にできん。帰ってくれないか?」

八反田さんはぐびっとお猪口のお酒を飲み干した。
私はまたお酒を注いだ。
早坂さんは彼を無視してそんな私に告げた。

「みゆり、そんなに早く注いだら男って引っ込みつかなくなっちゃうのよ。もっとゆっくり注いであげないと」

「そうそう。いくらこいつでも若くて可愛い子に注がれたらたまらんだろうからなぁ。この後どっかに連れ込まれっぞ!」

黙って見ていられなくなったのか、一仕事終えた親父さんはかかかと笑ってシケモクをしがみ、八反田さんをからかった。

けどもちろん八反田さんは反発する。

「まさか。そんな訳あるはずないだろ。それに俺はこれくらいじゃ出来上がったりしないって、マスターも知ってるじゃないですか」

「はは。確かにな。例えふらふらになっても、アンタにそんな勇気は沸かないもんなぁ」

「……その言い方にも語弊がありますよ」

「ないだろ」

親父さんは、

「あれから何年だっけ」

と太い腕を組んだ。
八反田さんは、

「マスターが店を潰してからは8年ですよ」

と不機嫌そう。

「お、言うようになったな。それなら、ま、お嬢ちゃんに一つ面白い話をしてやろう」

親父さんはシケモクを捻り潰してウーロンハイを作りながら鋭い切り口で話を始めた。

「こいつぁ昔っから世の不条理が許せないタチでね。ある時どうしたら汚れた川は綺麗になるのか俺に聞いてばかりいた。だから俺は言ってやった。それでもインダス川を信じて漬かる人間が山ほどいるってな。そしたらこいつ、なんて言ったと思う?」

親父さんはウーロンハイを自ら飲み始めた。
こういう種類の人は、私もきらいじゃない。

「じゃあ不貞を犯すと分かっていて首を突っ込む人間は、心から愛する人を見つけたってことですよね?それで幸せになれるんですかね?だとよ。こいつぁ、とんでもない大馬鹿者だと思ったね」

改めてかっかっと笑いながら、親父さんは落ちを付けた。

「お前が囲われ女とケリを付けたのも8年前だ」

私がその言葉に八反田さんを見つめると、彼はグビッとお猪口のお酒を飲み干した。
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